私には、下準備を一人でやろうとする癖がある。これは生来染み付いてしまったもので、直しようがないと思っていた。

 緊迫感のある音が鳴り響く船内。丁度その時に出くわした私は、自分のハンターのレベルを見て、とある決断をした。
 ファルス・アームに立ち向かってみるか。
 不安なので誰かと一緒に行きたい、しかし運悪く、声をかけた人は皆手が離せずこちらへは来られなかった。
 どうしようか。時間もあまり無い。
 人に迷惑は掛けたくない、その一心が私を追い込み、追い込んだ先は、完全なるソロでの戦いだった。
 思えばこれこそ、大きな失敗より恐れるべき、小さな躓きではなかったか。


恐れと蛮勇と、一欠片の勇気01
 テレポーターの使い方も、そもそもそれがテレポーターだと気付かずに右往左往したのも束の間だった。
 遠方に見える強大な赤黒い影。
 其処から送り出される、比べれば小振りな、しかし巨大には変わらない手。
 此処で一つの誤算があった。
 先人のファルス・アームに関する話を思い出してはいたものの、まず相手が四体とは思ってもみなかったのだ。
 動揺している暇も無く、戦闘が始まる。あまりに凶悪な四体が、たった一人に狙いを定めて。
恐れと蛮勇と、一欠片の勇気02
 暫くは逃げ回って、相手の出方を見る。動きは予想よりは遅く、かなり大振りな印象だった。
「これはいけるのかもしれない」
 楽観視する私に、レツィービートはさぞ言いたかっただろう。
「それは只の蛮勇じゃないのか?」

恐れと蛮勇と、一欠片の勇気03
 この頃、まだオーバーエンドを習得しておらず、支えはソードギアの無いソニックアロウだった。
 しかしダメージソースとしてはとても足りない。それを嘲笑うかのように、四方八方からファルス・アームが襲い掛かってくる。
 平手で、拳で、幾度も打たれる。吹き飛ぶ体を更に痛め付けられて、瀕死を告げるバイタルサインが数えきれない程悲鳴を上げた。
「これは無理か……!?」
 大ダメージに設定してあるレツィービートの言葉に、徐々に頷くしか出来なくなる。
 そうしてじりじりと追い込まれ、遂には制限時間が撤退を命じた。

 数の暴力とは個の力を圧倒する場合が殆どだ。今回はそれに負けた形だ。
 当たり前の事である。当たり前の事なのだが。
 命からがらキャンプシップへ戻り、窓の外を見るレツィービートの背中は、酷く疲れて見えた。

 そうして時は過ぎ、あの時声をかけたフレンドの方と、ファルス・アームへのリベンジに出撃した。作って貰ったパーティは、マルチパーティを組む設定だ。
 ちょっとした雑談中、私はこの前のファルス・アームをソロで行った事を告げた。大変驚かれたようだったが、まだこの時点では、その理由に私は気付いていなかった。
 そして勝てなかった事を告げると、フレンドの方は諭すように言った。

「個の力なんてものは大して強くないのさ」

 それに、「でも合わせれば、ですよね」と返そうとした指が止まった。
 それを絶ってしまったのは何故だった?
 ああそうだ。結局、自分の恐れに負けたんじゃないか。
 それはあまりに自分勝手で、寂しい結末だった。

 あの時とは逆に十二人の数の暴力を以てファルス・アームを、果てはダークファルス・エルダーを叩きのめす。
 打倒の瞬間、深く反省していたのは、きっと私だけなのだろう。

 私の癖は悪癖だ。
 恐れに負け、一人では出来ない事を見極められず自滅する。
 すぐには直せまい。しかし解りさえすれば、直しようはあるのではないだろうか。