迷いに迷って経験値欲しさに、緊急クエスト「迫る漆黒の腕」ベリーハードへと一人で赴いた時の事だ。
 それは二度目のファルス・アーム戦だっただろうか。アークスシップの甲板に降り立ち、私はマルチパーティの集まるテレポーターへ急いで走る。


「あ」
「あw」
 声を上げた周囲チャットの主はフレンドの黎次さんとこたつさん(こたっちゃん)だった。偶然にもマッチングされたらしい。
「ありゃw」
 テレポーターが起動してしまい、それ以上は言葉を言えなかったものの、私は驚きつつも何故か一欠片の安心感を覚えていた。
 そうして、転送開始。

 始まったファルス・アーム戦。偶に見える二人の姿に、私はやはり心強さを覚えていた。ダメージは相変わらず大きいが、何やら活き活きと戦ったように思う。無駄にあった緊張感が知っている顔を見た事で取り除かれたのだろうか。
 そうして、戦闘不能など問題はあったものの、何とかファルス・アーム戦を終わらせる。
「そろ?」
 ドロップアイテムを集めていると、黎次さんからウィスパーが飛んできた。片仮名に変換されていない辺りが急いている事を窺わせる。
「ですねえ」
 焦ってそれだけ打った私に、またウィスパーが飛んでくる。
「誘えないのか……」
 どうやら互いのクエスト終了後という状態がいけないらしい。何やら歯痒く思いながら、互いにその場を後にした。

 キャンプシップのクエストカウンターへアクセスし、最近漸く覚えたフレンドのいるパーティの検索をしてみる。しかしタイミングが悪いのか、候補に出てきた二人のパーティからは「特別なエリアにいる」との理由で弾かれてしまった。
 仕方無く、またクエストを受注する事にする。再び始まったファルス・アーム戦の途中、黎次さんからウィスパーが飛んできた。
「落ちちゃったからタイミングが合わないねえ」
 クエストを受けて十二人マッチングされてしまえば其処で定員、そのマルチパーティに追加で入る事は出来ない。
 なかなか難しい問題であるが、気にかけてくれた黎次さんに申し訳無い気がした私は、此処で諦めるのも癪だとある事を実行する。
 ファルス・アームを打倒し、キャンプシップへ急いで帰還すると、一目散にクエストカウンターの前へ走る。
 張り込みである。

 何度もパーティ検索をかけ、遂に求めていた名前のパーティが出現する。
 私は運を天に任せ、決定ボタンを連打した。
 すると読み込みが始まる。行けるのか、やきもきしながら読み込みを抜けた先には、確かに二人の姿が見えた。
「入っちゃったw」
 本当に加入出来た事に驚いて、つい言葉が零れてしまう。
「ないすタイミング」
 言葉を返す時間がなかったものの、そんなこたつさんの言葉に嬉しくなり、元気良くVサインでもしたい心地だった。

 それからはますます活き活きと戦ったように思う。
 馴染みのある人物と一緒にいる安心感は、何より力を引き出してくれる気がする。
 決して見知らぬ人を信じていない訳ではない。周囲の方々も、それぞれが立派な志を持っているだろう。
 しかし、馴染みというものにある、培った温かな信頼とは何と幸せな事だろう。
 そんな温かな感情を、これからも育めてゆけたら。今回の偶然が与えてくれた温もりに感謝して、私は心を引き締める。