「出来るかな?」
 それは可否を問うのではなく、ただのちょっとしたお願いである。
 そうなれば、こう答えるしかあるまい。
「じゃあ、行こうか」
 理由など些細なものである。
「そんな風に見えたから」

 腰に携えているヴィタエスレインは、ストーリーエピソード5を一振りで越えた辺りから随分と暇を持て余していた。多忙のあまりほぼ緊急クエストにしか行けていない現状も相まったものだ。
 そう見えたからには、思いきり戦わせてやりたい。

 そんな中で見付けたのは、クエストトリガー「灼熱の絶対零度トリガー」。コラボエネミーである灼零龍「エルゼリオン」との一対一が行えるものだ。ただしこれは使用に期限がある。その入手も難しく、大量には持てまい。
 延々と挑戦する事がかなわないという事は、失敗で終わる可能性が十分にあるという事だ。しかしそれは、挑戦しない理由としてはあまりに貧弱だった。
 手持ちのクエストトリガーは四つ、即ち挑むチャンスは四回。此処で不安になり、取引可能な事を利用して二つ買い足す。合計六つとなったクエストトリガーを見てから、漸く準備に取りかかった。


気高くはなく、高く01
 飲むドリンクは「デバンドリンクEX」、狙う副効果は「ランダム被ダメージ無効化」だ。エルゼリオンの攻撃は全てにおいて強力で、フリーフィールドでの戦いにおいて色々試した末にこれが一番安定して戦えたのである。
気高くはなく、高く02
 トリガークエスト「境界蝕む灼熱の絶対零度」での戦いには特殊ルールが設けられており、パーティーで合計三回戦闘不能になるとクエスト失敗扱いとなる。本家のルールを採用した形だ。しかし一人きりで戦闘不能になってからキャンプシップに戻った場合に判定がどうなるのか解らず、ハーフドールを持っていく事にした。
 そして攻撃面を強化する料理「肉野菜炒め」を一個、シフタライドを一個。シフタライドは転送直前にしか使えないだろう。
 これでいいだろうか。事故防止の為もあって武器パレットをヴィタエスレインで埋めて、デバンドリンクEXを厳選し、遂に出発した。
 此処と戦闘のさなかで多大なる忘れ物があるのだが、後述する。

気高くはなく、高く03
 トリガークエスト「境界蝕む灼熱の絶対零度」エクストラハード、何処かの「古塔」にて。パートニャーに見送られ、シフタライドを投げてから転送装置を起動した。
気高くはなく、高く04
 エルゼリオンの弱点は炎と氷属性だが、その体は炎と氷が混ざったものである。青色をした氷部分にはヴィタエスレインの持つ炎属性が弱点となって通り、反対に赤色の炎部分は大いに耐性を持つ。なるべくエルゼリオンの右側面に陣取らなければならないだろう。

 まずその表示を見て驚愕する。制限時間が60分という事は、それ程に体力もあるという事である。トリガークエストそのものは経験があったのだが、30分と思い込んでいただけにこれからの長期戦へ不安が募る。
 右側に、そして少し後方に陣取って戦っていたのだが、攻撃判定が足に吸われておりなかなか頭部分に当たらない。足は確かに弱点属性であり、破壊すればダウンや弱体化が狙えるのだが、破壊前は本体へのダメージとして扱われずに実質の無傷であるらしい。そうなればとても時間が足りたものではあるまい。
 戦い続けて、残り時間34:00頃だっただろうか。エルゼリオンが怒り状態に移行する。この移行ムービーで気を抜くと最後の咆哮と共に起こる爆風に巻き込まれてしまうので、レーダーマップを見て自分の向きを素早く調整し、頭を振り上げた瞬間ガードしてカウンターを決めておかねばならない。
 カウンターを決めながら、前半でカタナコンバットを全く使っていない事を思い出す。使い忘れた上で残り時間34分辺りでの怒り状態移行となれば、希望があるのではないか。上手く立ち回ればもしかするのかもしれない。そんな事を考えた矢先、立て続けに攻撃を貰って倒れ伏してしまう。
気高くはなく、高く05
 此処でキャンプシップへの帰還を試すにも勇気が要り、ハーフドールで起き上がるほうを取った。その時点で回復薬はスターアトマイザーのみという枯渇具合だったが、その逆境が緊張感を与えたのか。
気高くはなく、高く06
 何故か粘りを見せて、約5分間は耐えた。しかしその中で「肉野菜炒め」の効果が切れてしまい、勝ち目は薄くなってしまう。
 キャンプシップに戻ると、失敗扱いではなく補給が出来るようだ。ただし時計は動き続けており、アイテムの補給などをしていれば戻るまでにおよそ1分半はかかるだろう。これはハーフドールの使用に判断力が求められるかもしれない。
 戦い続けていて感じたのは、ソロ用にサブパレットの編集もせねばならない事だった。「肉野菜炒め」はサブパレットから使用せねば使っている暇が無い。シフタライドは爆発を避ける際に使うチャンスがあるかもしれない。そして攻撃強化面で「ミートレーション」を使い忘れていた事に気付く。
気高くはなく、高く07
 結局はこちらの三回戦闘不能で幕を下ろしたが、様々な事を学べただけ今回は収穫ありと言えるだろう。

気高くはなく、高く08
 フォトンブラストもダークブラストも使わない、そんな戦いはただおかしいだけなのかもしれない。そして中途半端な強さによる長時間の戦いなど、魅力も何もあったものではないだろう。
 それでも私は、このカタナに捧げたいものがあるのだ。

 この日はフリーフィールドでエルゼリオンの出現率がアップしている最終日だ。どうにか挑戦権を獲得出来ないものかと懸命に戦い続けた結果。
気高くはなく、高く09
 一つだけ「灼熱の絶対零度トリガー」を落としてくれたらしく、アイテムパックにひっそりと入っていた。

 失敗するかもしれない。
 成功など無理な話かもしれない。
 それでも挑みたいならば、行くしかない。そんなものだ。



 続き:「最凶は敵なのか