早くも夏の気配が近付いており、伴って不本意な引退の時期も色濃く感じられてきた頃。
 諦めと虚無感の中でふと気付く。やり残した、と表現出来る事があるではないか、と。

 エキスパート条件であるエクストリームクエスト「独極訓練:狂想と幻創」と、トリガークエスト「T:輝光を砕く母なる神」のSランククリアこそ目指していなかったのだが、未クリアの侭で放置しておくのも癪だった。
 しかしクリアどころか挑戦そのものがなかなか出来ておらず、ひとまず着手していた「独極訓練:狂想と幻創」も疎らな所為でまともな練習も出来ない侭、ステージ1で倒れてしまう事を繰り返していた。


 それはVITAサービス終了の告知の少し前の出来事だ。
 エクストリームクエスト「独極訓練:狂想と幻創」、このステージ1を初めて越える事が出来た。
誰が為の行く末01
 その勢いの侭にステージ5まで辿り着いたのだが、ただ一人の相手であるオメガ・ヒューナルとの対戦で全くの不注意とも言える失敗の果てに倒れてしまう。其処から再度挑戦したところ、またも一発でステージ5へと辿り着いたが、似たようなミスで返り討ちに遭った。
誰が為の行く末02
 その後に四回か五回は挑戦したのだが、何故かステージ3の魔人・ファレグを越えられなくなっており、どうしたものかと悩む気持ちに反してまた日が開いてしまう。
 そうして挑戦出来ない侭、あの告知日を迎えた。

 諦めと虚無感の中で気付いてから。
 挑戦して何になる。自問したが、何にもならないというのが答えだった。
 仮にエキスパート条件を満たしても、それをも無に帰す引退の事実が待っている事は変わらない。
 ただ、なるべくやり残した事が無いようにする、寂しい自己満足があるだけだ。
 それでいい事にも気付く。これは娯楽だ。ならば自己満足は、するべきだ。

 「独極訓練:狂想と幻創」にふらりと足を運ぶ。
 一度目は、やはり魔人・ファレグに追い返されてしまった。それだけでどっと疲れたので、その日はログアウトする。
 後日、然程日は置かずにログインする。思えば最近は短期間での再ログインはしていない。
 使用済みの料理「肉野菜炒め」とアイテム「ミートレーション」の残り時間を見ると、22分はあるようだ。Sランククリア条件が15分以内であるし、それ以上生き残れる気もしない。そうしてその侭向かう事にした。

 ステージ1、デウス・ヒューナスとの一対一。オーダーは60秒間ダメージを受けない事だ。しかし早々に周囲攻撃の竜巻のカウンターに失敗する。何とか打倒したが、これでは間に合うまいと肩を落として、カタナ耐性が付いてしまったステージ2へ進む。

誰が為の行く末03
 ステージ2はアラトロン・フェムトに頼りきってショックの状態異常になったウォルガーダ達を狙うのだが、バレットボウにセットしてあったフォトンアーツが意図したものとは違うものが混ざっており、効果的に立ち回る事が出来なかった。長々と過ごした結果、180秒以内に状態異常になったエネミーを二体打倒せよというオーダーも失敗し、ステージ3へ自棄になりつつ走る。

 ステージ3は幸いカタナ耐性が無い。とはいえ、足止めを食らっている元凶である魔人・ファレグが相手だ。オーダーによる回復禁止の中、足場がダメージ床になるギミックもある。
 このダメージ床こそ私にとっては鬼門だった。魔人・ファレグの動きに対応した台詞をなかなか覚えられない私は、スタンを付与する光線を特徴的な効果音で覚えているのだが、ダメージ床の発動前兆であるビープ音に重なってそれを聞き逃してしまう事を多々繰り返していた。
 それに悩み、果てに出した答えが、ロックオンカーソルに隠れるのもあって全く覚えられない動きそのものを、逐一見て判断するという、私からすれば無理だと思うしかない事である。
 それでも致命的なスタン攻撃と拘束攻撃、一番威力の高い三連続蹴りだけは確実に回避していく。他は無様な程に貰うのだが、魔人・ファレグは気紛れでもあったのだろうか。
誰が為の行く末04
 確実に避けた攻撃こそ、クリアの要であったらしい。

 ステージ4はファルス・アンゲルをまず打倒し、オーダー通り300秒以内にクローム・ドラゴンを打倒してから【若人】複製体を打倒する。途中、揉みくちゃにされてひやりとする場面もあったが、終わってみれば少し時間をかけた程度らしい。

 ステージ5はいよいよオメガ・ヒューナルとの対戦だ。部位破壊のオーダーをこなす気は無かった。構っている余裕が無いのだ。
 此処で最大のミスをする。転送前に態勢を整えるのを忘れてしまったのだ。強化アイテムの時間切れに気を取られてしまったらしい。固有武器によるシフタも、カタナギアの発動も無く、アイテムに至ってはミートレーションを忘れるという大失敗である。
 それでも諦めずに戦ってみる。幾つか攻撃を貰ってしまう場面もあったのだが、そのどれもが重いダメージのものではなかったので踏み留まる事が出来た。致命的な攻撃を確実にカウンターし、徐々にオメガ・ヒューナルを追い詰めていく。
 怒り状態に移行し、暫くしたところで使用可能になったカタナコンバットを発動させてアサギリレンダンを何度も叩き込む。距離を取られて当たらなくなればすぐさまステップで動作をキャンセルし、ぎりぎりでフィニッシュした。
 フィニッシュを浴びたオメガ・ヒューナルはまだ倒れず、猛攻が続く。攻撃の一つ一つを注意深くカウンターして、此処だとサクラエンド零式で斬り付けた。
誰が為の行く末05
 其処で手応えが無くなる。思えばサクラエンド零式よりもカウンターの回数のほうが多かったのではないだろうか。

 タイムはどうだろうか。勝利にも動揺してそれを示すテロップもよく見ておらず、キャンプシップへと恐る恐る戻った。
誰が為の行く末06
 ぎりぎりではあるが。本当に勝てたのだ。

誰が為の行く末07
 続けざまに挑戦したトリガークエスト「輝光を砕く母なる神」もクリアは出来たのだが、とにかくムービー前後の読み込みに時間がかかり、エスカファルス・マザーの打倒ムービーまで仕込まれている意地悪にも振り回される。デウスエスカ・グラーシアに効果的な攻撃をあれこれ模索した事も災いし、大幅にタイムを超過してのAランククリアだった。

 最もクリアしたかったものはクリア出来たので今回は良しとしたい。今回は、であるが。
 そしてもし完遂したとしても、その全ては無に帰す未来しか待っていない。
 誰の為にも、自分の為にすら殆どならない壮大な自己満足は、どのような結果を迎えるのだろうか。