前回:「銀朱色した輝きの君 第2話



 全くの二次創作の文章です。苦手なかたは閲覧をお控え下さい。

 現れる思いの形。
 戸惑いながらも、向かうは先へと。




「えーっ」
「一人で暮らすのか?」
 二人の帰宅後。驚きの声を上げたエルダローエとツィーエ、そして問いかけるクレイトへ、ヴィスレンは頷く。
「わたしがうごけるようになったのは、わたししかしらないせかいを、みるためなんだと、おもう」
「本人の希望は尊重したいしな……」
 俯くすけてっとに加えてレツィービートの声音にも惜しい感情があり、ヴィスレンは不思議そうに全員を見た。
「どうして、ざんねんそうなの?」
「今までずっと一緒だったし?」
「家族みてえなもんかなって……」
 エルダローエとツィーエの答え、それに頷く他を見てヴィスレンは驚いたように目を見開き、次には俯いた。
「どうした?」
 レツィービートが告げると、やがてその肩が震え出す。光る双眸から零れ落ちる涙は、あの薄赤色のものだった。
「ご、ごめんなさいっす」
「勝手だったっすか……」
 慌てる二人へヴィスレンは答えを返す。
「かなしく、ない」
 涙を手の甲でやや乱暴に拭いつつ、言葉を続けた。
「わたしはずっと、みんなのことが、だいすきだったから」



 ヴィスレンへマイルームが割り当てられるのは明後日だという。それまでは此処に寝泊まりする事になった。
 生活用品は既に買い揃えたので心配無いだろう。今も丁度良いサイズの寝間着を着ている。夕飯も食べてみたが特に変わった様子は無く、他の雑事も無事に済ませられたので、ごく普通の生活を送るには支障無いと解った。



「クレイト」
 本を読みながら寛いでいたところにヴィスレンから声がかかる。
「レン? どうした」
 それと呼ぶのは愛称でいい、そう付け加えて読む手を休めたクレイトの傍らへ、ヴィスレンは座り込むと暗い表情をして俯いた。
「わたしは、あのとき、あなたのことを、うらぎりたくなかった……」
「裏切る……、もしかして、俺がブレイバー適正審査を受けた時の事か?」
 尋ねるとヴィスレンは小さく頷いた。
 アークス認可証を漸く手に入れたクレイトは、その身体ダメージの深さによりフォトン感応値も大幅に下がり、ヴィタエスレインを持てなくなっていた。彼を裏切る行為とはそれを指しているのだろう。
「あれは裏切るとは違うさ、お前は悪くない。それに、俺はもう『クレイト』だから、心配しなくていいんだ」
 泣き出しそうな顔をしたヴィスレンの頭をそっと撫でて告げる。ヴィスレンは甘えるように目を伏せ、そっと口を開いた。
「わたしは……あなたのことも、だいすきだったから」
 その言葉にクレイトは面食らい、次には困ったように笑う。
「有り難う。その気持ちだけで充分だ」
 泣き出しそうなのは自分のほうなのかもしれない。



『レンおねえちゃん』
 集まった四人の内、れーすけがホワイトボードで呼ぶ。呼称は最初の印象が残っているのだろう。
「どうしたの……?」
『レンおねえちゃんみたいなひとは、めずらしいんだってね』
「うん」
 すると長文なのか、四人が一斉に文章を書く。
『めずらしいひとは、ときどきいじめられるから』
『ひどいことをいうひともいるから、きをつけて』
『もしもこまったら、いってね』
『ぼくたち、いっぱいいっぱいがんばるから』
 これは特殊な経歴を持つすけてっとの体験談でもある。そして小さな彼らの、大きな苦しみを乗り越えた末に手にした勇気の表れだった。
 そしてその勇気をヴィスレンの為に使う、四人の想いの深さだ。
「ありがとう……、わたしも、せいいっぱい、がんばる」
 己を想っていた人物は、己が考える以上に沢山いたのだ。



「ツィービー」
 呼ばれてレツィービートが振り返ると、其処にはすけてっとを抱いたヴィスレンがいた。
 その侭ちょこなんと隣に座るヴィスレンの表情を見て、レツィービートは笑みを浮かべた。
「ふふ、嬉しそうだな」
「うん」
 表情はややぎこちなく表れるが、決して乏しい訳ではない。
「たのみたいことが、あるの」
「何だ?」
「たまに、あそびにきても、いい?」
「ああ。いつでも来るといいさ」
 するとヴィスレンは小さく息をついて、呟くように言った。
「よかった……」
 レツィービートはその反応に、予想がほぼ合っているのだろうと悟る。
 ヴィスレンを皆が想っているように、ヴィスレンもまた、皆を想っているのだろう。しかしヴィスレンは、自身の想いが一方通行なのではないかと不安に思っていたのだ。
 その不安も取り除かれて、これからヴィスレンは伸び伸びと成長していくのだろう。
 この先、辛い出来事もあるかもしれない。
 だが、きっと折れずに立ち向かう。そう信じ、そうしてきたのだ。