全くの二次創作の文章です。苦手なかたは閲覧をお控えください。

 判明した事実は、怒りと悲しみと、希望を与えた。
 そして、希望は自由へと動き出す。




 考えていた。
 考えて、行き着いた一つの可能性がある。
 確かめなくてはならない。
 もしそれが事実ならば、あまりに残酷であるからだ。



 何とは無しに尋ねた事がきっかけだった。
 サポートパートナーが自主的に動いた事はあるか、と。
 すると皆口を揃えて、そういえば指示以外では動いた姿を見た事が無い、と言う。指示が無い限りコンソールから動かないどころか、返しの挨拶程度しか話す事すらない、とも。
「……じゃあ今、誰が指示を出したんだ?」
 そう尋ねたクレイトの足元には、取り込み途中の洗濯物を受け取りに来たカカゼがいる。
「私は、どなたの指示も受けていません。……余計でしたか?」
 人工知能で制御された機械、言ってしまえばただのプログラム。それがサポートパートナーというものの特徴であり、キャストとの差別化部分である。
 それが、自身で余計と表現する程の自主行動をするだろうか。
「……カカゼ。大事な話がある」



 カカゼを連れ、役所に到着したクレイトがまず行ったのは、カカゼが生産された当時の状況を確認する事だった。
「……開発部の資料によりますと、そのサポートパートナーは確かに、欠陥による廃棄予定が存在した記録がありますね」
 係員の言葉にクレイトは内心安堵する。その記録が最大の武器になるからだ。
「その欠陥の内容は、個性変更機能が働かない、で合っていますか」
「はい、そのように記載されています」
 此処からが勝負だ。傍らのカカゼをちらりと見遣り、クレイトは口を開いた。
「その原因を以て、カカゼを人として登録してください」
 係員は一瞬茫然としてから、困惑の声で告げた。
「サポートパートナーを、ですか?」
「カカゼには、人としての心が存在します。確立した個である以上は、個性の変更など出来ないのが自然です」
「その根拠はありますか」
「はい。カカゼが、自分の意思で自分を名付けた時が一番根拠として強いと思います。……言うより見たほうが早いでしょうね」
 クレイトは少し顔を寄せると声を小さく、そして恨むように低くして告げた。
「ダーカー製クローンの監視記録が残っている筈です。それにアークス認可証が下りた初期の頃ですよ」
 眼前の人物が何者であるか悟った係員は、息を呑んで何処かへとデータを問い合わせる。やがて送られてきたデータに目を通し、驚愕の表情を張り付かせて半ば呟くように言った。
「あり、ました……」
「指示を受けない限り動かない、ただの機械であるサポートパートナーが、自由意思で自身を名付ける。これはあり得ない事ですよね?」
「そのような事は、他には記録が無いようです……」
 係員に明らかな焦りが混ざり始めたところで、クレイトは最後の一押しをする。
「心を持っている者を廃棄しようとした。こちらとしては、この事実を殺人に該当すると考えますが、そちらの見解は如何でしょうか」
「それは……専門の部署へ問い合わせをしてみませんと……」
「では早めに……そうですね、明日にはご回答願えますか。因みにこの会話は録音させて頂いておりますので」
 暗に「断ればこの事実を世間へ公表する」と言っているのだ。クレイトの存在を容認している事実ごと、である。そうなればオラクルへ疑惑や反感が行くのは避けられまい。
 言葉の裏にあった意味へカカゼが気付き、クレイトを見遣る。
「クレイトさん……!」
 焦燥感のある声に、クレイトは微笑みを向けるだけだった。



 続き:「風の行き先 第2話