前回:「Si vis amari, ama. 第4話



 全くの二次創作の文章です。苦手なかたは閲覧をお控えください。
 フレンドさんをお借りしたお話。

 不運と絶望はいつもの事。
 しかし今回だけは諦められなかった。




■-5 Occasio aegre offertur, facile amittitur.

「済みません、急にお呼び立てしてしまって」
「いいえ、落ち着いてからお話したほうが良さそうでしたし」
 すっかり夏の装いとなったフランカ's カフェにて。クレイトから連絡を受けたアメジストの提案で、通信ではなく腰を据えて話す事となった。
「早速ですが……最近、カカゼに元気が無いんです。それに、見たところメメさんも……。何か原因にお心当たりはありませんか?」
「クレさん、それには深い事情があるんです……」
「ああ、済みません。前にメメさんご本人から、カカゼへのお気持ちは聞いています。けれど、あの後何があったのかは知りません」
 あの帰りが遅かった時だと気付き、アメジストは話を進める事にする。
「それが、メメさんがカカゼさんに誤解されて、嫌われてしまったらしいんです」
「誤解、ですか……」
「お二人の問題ですから、あまり干渉は出来ませんけれど……。メメさん、大好きなお酒の量が減るくらいショックが大きいみたいなんです」
 メメントがかなりの酒豪である事はクレイトも知るところだ。そのような落ち込みようは異常の域である。
「そうですか……。カカゼは、上の空な事が多くて……カカゼはしっかり者でしたから、一体どうしたのかと思ったんです。カカゼも相当ショックだったみたいですね……」
 端々にあるカカゼを人として認める言葉に、アメジストはクレイトのカカゼに対する情を汲み取る事が出来た。しかし事態は両者深刻なようだ。
「これって、すれ違いなんでしょうね……」
「どうにかして、誤解が解けるといいんですけれど……」
 まるで子の付き合いを認可した親達の悩みだった。



 その日の夜、クレイトが雑事を終えて寛いでいる時だった。
 軽い電子音が鳴り響く。くれすけが音の出どころである通信機を持ってきてくれたので、礼を言いつつ受け取った。通信は音声のみのようだ。
「はい。……どうした? カカゼ」
 此処は何も知らない体でいたほうがいいだろう。クレイトはカカゼの言葉を待った。
「クレイトさん……済みません……」
 その声音にいつもの毅然とした印象はまるで無い。
「謝らなくていいさ。大丈夫だ、ゆっくり話してくれ」
 クレイトが努めて穏やかに告げると、カカゼは弱々しい声で話す。
「……苦しいんです、とても……」
「苦しい?」
「はい……。この苦しさから脱したいのですが、どうすればいいか解らなくて……考えれば考える程に、苦しくなってしまうんです……」
「カカゼ。多分それは、悲しいんだ」
「悲しい……、そうなのですか……」
 心当たりがあるように、呟くようにカカゼが言った。
「悲しいのは、その原因になったものが好きだからだと俺は思う。もし、その好きなものをこれからも好きでいたいなら、まずは向き合ってくれ。目を逸らさずに、しっかりと見るんだ。全て見てからでも、判断は遅くないと思う」
「解りました……。有り難うございます、クレイトさん……」
「いいんだ。俺は、お前が幸せになってくれると、信じてるから」
 最後の言葉は、以前クレイトとカカゼが交わした誓いの言葉だった。



 クレイトとの通信を終えて、カカゼははたと気付く。今までショートメッセージの履歴を見ていなかったのだ。
 何件か届いていたショートメッセージの中に、それはあった。
「済みません……済みません……!」
 カカゼは思わずその場に崩れ落ちる。
 そのメッセージの受信日から、実に一ヶ月が経過していた。



「十九時から二十二時まで、フランカ's カフェのあの席で待ってます」






 Occasio aegre offertur, facile amittitur.
 -機会は与えられにくく、失われやすい-



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