前回:「その向こうにある一つ 第4話



 全くの二次創作の文章です。
 設定の全てが出てきます。また、少々過激な表現が散見されます。
 以上が苦手なかたは閲覧をお控えください。

 今を漂う惨劇の人へ、何が出来るだろうか。




■-5

 いつ振りか、深く眠っていたようだ。何処か心地良かったような感覚がある。
 明るい光が外から差し込んでいる。身を起こして周囲を見渡すが、自分と同じように寝ている者はいなかった。
 この寝床へ移動した記憶は無いが、予想をするのは簡単だ。途切れた記憶の後に運んでくれたのだろう。
 先程から物音が聞こえる。この音は何だろうか。あそこには何があるだろうか。何も解らない。それでも、温かな場所だと感じる事が出来た。
 部屋の出口をじっと見ていると、ふと扉が開いて一人の小人がこちらを見る。そして何事かを手にしたボードへ綴った。
『すーぱぱ、おはよう!』
 何とか文字の記憶を漁り、これだけを読み取るにも随分時間がかかった。しかし今一つ意味するところが解らない。迷っていると小人はボードへ新しく何かを書いた。
『あさのごあいさつ、おはようっていうんだよ』
「……おはよう」
 それを聞いた小人は何度も頷いた。そして手招きする。寝床を抜け出し、誘われるが侭に扉の向こうへ戻る小人の後を追った。



 キッチン兼ダイニングの扉が開いた音で全員がそちらを見る。少し驚いているようだ。
『すーぱぱ、おきたよ』
「おはよう」
 習ったばかりの挨拶をする彼へ皆が挨拶を返す。空いている席へ座るよう促され、席に着くと皆が食べているものと同じものを出された。
「食べられるか?」
「ためす」
 答えてから、仮面の下から一本触手を伸ばす。口の代わりだ。
「これ熱いっすから気い付けてくださいね」
 軽く頷いて、熱いと言われた液体に触手を伸ばす。触手を近付けてみると、確かに熱を感じるが自分は傷を負う心配が無さそうだった。周りを見てみると器はその侭なので食べてはいけないのだろうと考える。触手の先端を浸し、軽く吸ってみる。すると幾つもの感覚があり、それらの一部が味覚だと理解するのに少し迷った。どうやら自分にも味覚はあったようだ。
 触手を離した頃には綺麗に平らげており、器も傷付けずに済んだ。
「どうだろう、美味しいか?」
「おいしい、なに? わからない」
「えっと、もうちょっと食いてえなって思ったら、多分美味しいって事じゃねえっすかね」
 説明に少し考えてから、納得したように一つ頷く。
「おいしい」
 その言葉で皆が笑顔になる。こんな光景が遠い昔、今は理解出来ない記憶の中にあったような気がした。



「たのしむ」
 そうする事は裏切りだと思っていた。だが違った。願いはそうではなかった。
「たのしむ、ここ、いま……」
 そうする事が、自分に出来る事だ。