あのヴィタエスレインの特殊能力を付け直してから考える。力試しをするにはどのような相手が良いのだろうか。
 現在は季節緊急クエストが多く開催されており、レイドボス系にソロで挑む事は難しい。考えた末に思い出したのは、魔人と謳われる人の存在だった。


 そうしてストーリークエスト「決闘」へ挑戦したのだが、どうにも妙な心地になる。此処まで魔人・ファレグは硬かっただろうか。後半戦には突入するのだが、いつまで経っても倒れてくれない。その侭押し負けてしまう事が殆どで、ある時にちらりと制限時間を見て驚愕した。たったの2分しか残っていないのである。
段違いを駆け上がれ01
 何かおかしい、これ程遅くはなかった筈だ。疑問と焦燥の中で遂に勝ったのだが、回復薬も尽き始めており、本当にぎりぎりの戦いだった。
段違いを駆け上がれ02
 改めてクリアタイムを見て更に驚く。6:54、つまり残り時間はたったの6秒である。前回をAランク、3:11でクリアしている事を考えると信じられないタイムだった。

 この違いは何なのだろうか。調べてみると答えはすぐに解った。
 前回魔人・ファレグと戦い勝利したのは、2017年12月24日の事である。現在は2020年6月9日だ。
 このクエスト、「決闘」は2019年4月24日に変更されているものが幾つかある。その中の元々高かった攻撃力の増加はさておき、体力に大幅な増加があったらしい。有志によれば約四倍にもなるという。魔人・ファレグの体力は決して低いものではなかったので、ますます手が付けられなくなったという具合だ。
 つまるところ、前の魔人・ファレグと今のその人は、段違いなのである。

段違いを駆け上がれ03
 謎も解けたところで、改めて思う。
 より強力になった相手に、より強力になった一振りで勝った事には変わりない。
 何よりも勝てた事が私にとっては、この一振りにとっては誉れなのだ。戦いの前、彼女の言葉にもあるように、何も見返りの無い戦いで、勝利の事実だけがある。それこそが輝きなのだ。
 立ち塞がる壁を階段のようにとはいかないが、乗り越えた事実は必ず何処かで実を結ぶのだろう。