トリガークエスト「輝光を砕く母なる神」。これに挑戦し、クリアこそしたが、Sランククリアは出来ていなかった。
 VITAサービスが終了する直前、Sランククリアを目指して再び挑む。
 エキスパートの為ではなかった。寧ろ頭に無い。
 理由はただ一つ。負けた侭がどうにも癪である、つまりは負けず嫌いなだけだ。


 僅かなチャンスの中、累計七回は挑戦出来ただろうか。
流星は地に届くか01
 Sランククリア条件である18分以内のクリアがまるで見えてこない。最速タイムですら21分4秒もかかっている。
 観念して有志の攻略に縋ってみるが、後継クラスの話ばかりでブレイバー/ハンターの挑戦者はほぼいないようだった。唯一情報があったのは、「ブレイバーの武器、特にカタナはこのクエストのエネミーには向いていない」というものだけで、かなり絶望的だという事実しか寄越してくれなかった。

 何か出来る強化は無いか考えて、ふとスキルツリーを見直すと各クラスの「ハイレベルボーナス」を見落としている事に気付く。メインとサブのクラスで合計10%のダメージボーナスは大きいだろう。

 戦い方も見直し、サクラエンド零式が実装された頃、「サクラゲッカ3」が強い、との情報が出ていた事を思い出す。サクラエンド零式で少し宙に浮いたところで、空中で放つと高速化出来るゲッカザクロを放ち、締めは二連撃となる通常攻撃三段目でPPを効率良く回収するというコンボだ。
 サクラエンド零式連打とダメージがどれくらい違うのか、練習クエストにてダメージ測定してみたのだが、ロックベアの弱点に当たる回数によってばらつき、出現場所が離れている為に背後からの攻撃タイミングにもばらつきが出てしまい、正しい測定は出来なかった。加えて慣れないコンボである、操作ミスが頻発する。
 こうなっては、実地訓練しかない。

 アイテムも少々見直す。「肉野菜炒め」は定番だが、打撃とPPを上昇させる「ミートレーション」から、打射法の攻撃面のみに特化した「ミラクルレーション」に切り替えた。射撃を上げて解式フォトンアーツ「セルリアンバリスタ」の威力を上げる為だ。これは方向キーを入力してしまうと挙動が広範囲攻撃に変わってしまうので、細心の注意を払わねばならない。

 ドリンクはランダムドリンク、副効果の弱点ダメージ率アップを発動させる。
 シフタライドを持ち、カタナギアを発動させてキープし、出撃前にはバレットボウのフォトンアーツ「チェイスアロウ」を撃っておく。
 様々な下準備が出来たところ、こちらもまだまだらしい。

 そうした準備をしてからの結果といえば。
流星は地に届くか02
 可能性が、希望が。
流星は地に届くか03
 見えてきた。

 エスカファルス・マザー戦の開幕にはかなり長い時間がかかる。ムービーから読み込みまでで約27秒のロスをさせておいて、攻撃が出来るようになるまでは更に待たされる。その待ち時間にメニューからシフタライドを投げ、しっかりと四回のシフタをかけた。
 タイミングを見計らって武器をカタナに切り替え、グレンテッセンでひたすら腕を攻撃する。攻撃時に長い間姿を消してしまうルーサーの腕は優先的に倒さねばタイムロスになる。
 エスカファルス・マザーがダウンした時にコンボを叩き込む。またのダウン時には丁度ストック出来ていたセルリアンバリスタを集中型で二発撃ち込む事に成功し、更にカタナで斬り付けた。するとダウン回数が減り、早めに大技を繰り出す。時間短縮出来たらしい。アサギリレンダンで高速移動し、全ての立方体を破壊した。
 一回目の大技が終わるとエスカファルス・マザーは動き回り、コアも上の方に位置する為、サクラエンド零式を連打するパレットに変更した。二回目の大技は破壊が間に合わず発動するが、何とか生き残ったので素早く立て直す。
 そうしてエスカファルス・マザーを打倒したのは7分半が過ぎた頃だろうか。打倒直後はレーダーマップを見て中央に移動し、現れたテレポーターで迅速に次のエリアへと向かった。

 デウスエスカ・グラーシア戦の開幕は竜達が頭を高々と上げてしまう。其処をバレットボウで撃ち、頭を下ろしたところでグレンテッセンを連打した。動き回る頭にカタナで追い付くにはこれしかなかったのだ。
 竜達の溜め攻撃の光球はステップアタック一回とグレンテッセン一回でほぼ壊れるようで、PPの無駄遣いをしないように心がける。
 程無くしてデウスエスカ・グラーシア本体の攻撃になるが、此処からが試練だった。カタナでは全く攻撃が届かない距離に陣取り、かといってバレットボウに持ち替えようとすると近寄ってくる、下手に戦えば悪循環に陥るだけなのだ。如何にカタナを上手く当てて解式フォトンアーツのストックを増やし、集中型のセルリアンバリスタを命中させられるかに全てが懸かっている。
 広範囲を往復して薙ぎ払う攻撃の後と、拳を二回叩き付ける攻撃の後が唯一の攻撃チャンスだが、前者はグレンテッセンで深追いすると復路の雷を避けきれない。後者は位置取りによってはカウンターさえ不要だが、拳の周囲に生えてくる茨や雷に注意せねばならない。結局はどちらも曲者だったが、僅かな停止時間にセルリアンバリスタを一発放ち、全段ヒットしたのを確認してからカタナへ切り替えた。当たり前だが、途中で武器を変えてしまうとセルリアンバリスタの矢は消失してしまうので、此処もミスが出来ない。
 月破壊ムービーのなんともどかしい事だろうか。ムービーが終わればすぐにダークブラストを発動させ、エルダーフォームで追尾性能のあるタイラントストライクを連打する。竜の頭が動く事もあるが、動き回る事でデウスエスカ・グラーシアからの光弾を避けるのも狙ってのものだ。
 ぎりぎりで竜の頭を落としきり、倒れ込んだデウスエスカ・グラーシアへアルティメットインパクトを叩き込む事が出来た。駄目押しにパニッシュメントナックルも打ち込み、デウスエスカ・グラーシアが起きると同時に変身を解除する。
 此処からは攻撃が苛烈になるものの、攻撃チャンスである硬直時間は若干延びるようだ。セルリアンバリスタを撃ち込みやすくなると同時に、より正確な動作が求められる。
 出し惜しみせず、しかし確実に。そうして空が金色に光り始め、デウスエスカ・グラーシアがダウンする。シエラの通信も言う通り、あともう少しらしい。
 カタナのコンボを決してミスしないように繰り返し、ある時手応えが無くなった。
流星は地に届くか04
 戦いの最中は時間など見る余裕も無いので、完全勝利なのかぬか喜びなのかどうか解らない時間表示に戦いとは別の緊張が走る。
 恐る恐るキャンプシップへと戻り、示されたものは。
流星は地に届くか05
 華麗とはいかないが。完全勝利である。

流星は地に届くか06
 降り注ぐ流星のように、挑んでは燃え尽き、負かされてきた。
 今回は、今回こそは燃え尽きる事無く届いた星の欠片は、この後何処へと導くのか。解らないその可能性は、静かに光っている。